石でできた鳥居のキズを調べてみよう!



山形大学名誉教授 川 辺 孝 幸

2019年10月24日更新

 石でできた鳥居をよく見てみると,貫と柱,笠木と柱など,鳥居をつくっている部品を組み合わせたところに割れて欠けた傷があったり,欠けた部分をセメントなどで埋めて修理してあったりすることがあります.また,柱の途中や根本付近に,ヒビが入っていたりすることがあります.



鳥居のキズの例(山形市小立 中嶋稲荷神社)

 このような傷は,鳥居が造られてから,鳥居に何らかの力がはたらいて,鳥居がかしいだりして変形したときに,欠けた部分に力がかかって壊れてしまった傷です.

 石でできた鳥居が傾くような変形をするには,外からの大きな力が必要です.
 外から鳥居に大きな力がかかるのは,たとえば,車がぶつかってしまった時とか,大きな木が倒れてきたときなどが,すぐに思い浮かぶと思います.

 また,大きな地震がおこったあとに調べてみると,たとえば2007年3月におこった能登半島地震では,地震によって倒れたり,部品の合せ部が壊れたりしている鳥居をたくさん見ることができたので,大きい揺れの地震でも鳥居が壊れることがわかりました.

石でできた鳥居のこわれやすい場所

 たくさんの石でできた鳥居を調べると,こわれ方やこわれた場所は,下の図のようにまとめることができます.この図には描いていませんが,柱自体がわれたり,貫や笠木が落ちたりするこわれ方もあります.

 それぞれの場所のどこに傷があるか,その位置も,力がかかった方向を知るのに重要です.



石でできた鳥居のこわれやすい場所

こわれた位置とかかった力

 それぞれの場所でどの位置でこわれたかがわかると,その位置にかかった力を知ることができます.
 欠けている場合には,欠けたところでは,その方向に押された力がかかったからです.



こわれた位置とかかった力

ゆれの大きさと被害の大きさ

 こわれる場所は,場所によって,やや小さな力でこわれやすいところと,大きな力でないとこわれないところがあります.
 このようなことから,こわれやすさを考えて,こわれた場所ごとに点数を付け,鳥居全体の合計点で,その鳥居にかかった力の大きさを表します.この合計点を,「被害度(ひがいど)」と呼んでいます



場所ごとの被害と点数

被害度と震度との関係

 2007年能登半島地震のときの被害度と震度との関係をもとに,山形盆地での被害度と震度との関係は,下の表のようになると思われます.
 能登半島では,石はこわれにくいかこう岩が使われていて,山形盆地では,こわれやすいぎょうかい岩やあんざん岩で鳥居ができているので,能登半島の場合と比べると,より小さい震度で大きい被害が出ると考えられるからです.



石造鳥居の岩石の種類と震度との関係


実際に調べてみよう!

 実際に,みなさんの住んでいるところの近くにある,鳥居を調べてみましょう.

 調べるときには,下のような記録用紙があると便利です.この用紙は,https://www.k-es.org/torii/からダウンロードできます(「鳥居 地震 被害」で検索すると出てきます).



石造鳥居の調査記録用紙

調べ方のコツ

 調査の時には,タブレットやスマートフォン,あるいはUSB-GPSなどを用いたのオートパソコン上で,電子地図(インターネット地図や市販のもの)があると便利です.地図上の自分の位置を知ったり,自分のいる地名を知ったり,神社の名前をしったりすることができます.


 神社の名前と地名を調べて記入します.

 神社の名前は,鳥居のそばにある石柱や,鳥居にある額に書いてありますが,難しい字で書いてあったり,額は過去の地震などで無くなっている場合があります.そのときには,神社の社(やしろ;建物)の入り口の上に,額があって,そこに書かれているので,それを読み取ります.それも無い場合?近所におられる人を探して聞いてみましょう.鳥居に関しても聞けば,いろいろ教えてくれるかもしれません.

 また,鳥居の柱の裏側には,鳥居が作られた年代(和暦表記)や寄進した人(人々)のお名前や,鳥居を造った職人の方の名前(石工さんの名前)が書いてあることが多いです.これらも記録しておきましょう.


 鳥居の形と素材の種類を調べて書き込みます。

 鳥居の形は,大別すると,最初に書いたように,明神鳥居と神明鳥居があります.さらに,それらの柱の前後に小さな柱を立てて柱とつなぐ水平の木を渡した両部式というのがあります.このほかいろんなバラエティがありますが,ここでは省略!



鳥居の型と各部の名前


 岩石の種類は,これまで見てきた経験からすると,一番多いのは花こう岩,次いで安山岩,凝灰岩です.それ以外の石はほとんど見受けませんでした.これらの違いは,慣れればすぐわかると思いますが,教科書やインターネットを参考に,最初はじっくり観察してみわけてみてください.


 鳥居の柱の並びの方向を測ります.

 北を中心に,表側(鳥居の外に面した側)が東あるいは西に何度振っているかを方位磁石を使って測り,北から西に何度振っている場合には N 何°W,東に振っている場合には N 何°E というふうに記録します.この場合,角度はそれぞれ90度までです.それ以上の場合(南から西あるいは東に振っている場合)には,S 何°W,S 何°E というように測ります.
 鳥居の図上で,どちらが西側でどちらが東側かを書いておけば間違わないでしょう.
 もう一か所,左上の円,北が真上になっています.そこで柱の並びの方向を線で描き,線の中心部分に額のある側を長方形で示しておけば,間違わないと思います.


 それぞれの場所に傷がないかどうかをよく観察して,ある場合には,傷の場所とその程度を鳥居の絵に,たとえば赤のペンで描き込みます.

 そして,傷の場所から,鳥居に対してどのように変形して傷ができたかを,前述の図を参考に,右上の円の中に書き込んだ鳥居の線に,力の方向を赤などで書き入れます.(ここのところがむつかしいかもですね)


 地元の年配やお年寄りの方にお会いできることができたら,大きな地震のときの話を.ぜひ聞いてみましょう.

 鳥居の傷も重要ですが,地震動の様子を知るには,さらに重要ことだと思います.

それでは,ぜひがんばって調べてみてください!

詳しくは...

  • 地震による石造鳥居の被害から 地震動を推定する-2007年能登半島地震と2007年中越沖地震の場合-
  • 山形盆地の神社と鳥居の損傷痕から推定した1964年新潟地震の被害
  • 山形盆地の神社と鳥居とその損傷状況のデータベース

    などをご覧いただき,参考にしてください.


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