山形大学地域教育文化学部生活総合学科生活環境科学コース地学(川辺)研究室

平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に関して
津波到達範囲について



山形大学地域教育文化学部生活総合学科生活環境科学コース 川辺孝幸
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2011年3月29日公開(2011年3月27日10時45分更新

●仙台平野主部における微地形と津波の到達範囲の概略
 左の図は,国土地理院2011年3月12日撮影の空中写真をもとに,仙台平野主部における津波の到達範囲の概略を示してあります(青線).地形図は,地形図は,国土地理院発行2.5万分の1『仙台西南部』,『仙台東南部』,『岩沼』,『仙台空港』,『亘理』,『荒浜』,陸軍陸地測量部発行2万分の1『仙臺南部』,『原町』,『増田』,『閑上』,『岩沼』,『矢目』,『亙理』,『矢目』を使用しました.
 微地形は,2万分の1地形図に示される, 水田を緑に, 湿地を青に, 畑地・集落, 林などを肌色で示したもので,厳密には土地利用を表している,ということになります.微地形要素としては, 前者には, 堤間低地, 放棄河道, 谷底平野などが, 後者には,自然堤防, 砂丘(浜堤), 人工盛土などが含まれます.  この図からは,西から流れてくる河川が,仙台平野に入って,名取川および広瀬川では複合扇状地を,阿武隈川も河川の形態としては蛇行河川ですが,放棄河道とその両側の自然堤防,越流堆積物(スプレッドシート)などで,沈降域特有の扇状地をつくっていることがわかります.
 また,扇状地や丘陵の張り出しの間の低地には,内陸約5km程度の標高約3.5m付近まで,4列程度の砂丘列が認められます.

 浜堤・砂丘の破壊は,河川の河口部やラグーンのインレットの部分で起こっていることがわかります.
 津波は,概ね,海岸線から3〜5km内陸の,ほぼ,扇状地の扇端部の手前や,海側から3番目の砂丘列の手前までの,標高2.5m〜3.5m程度の範囲まで到達したことがわかります.
 しかし,津波の到達距離・標高は,等高線に斜交する範囲も多く,必ずしも自然地形に対応しているわけでありません.むしろ,盛土になっている仙台南部道路の高まりが堤防の役割を果たして,津波の勢いを押さえているように見えます.

 この図の大きいイメージはこちら(3.1MB)
 この図のPDF版はこちら(3.1MB)(2011/03/27 10:45更新)


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